北欧フィンランドには、古い民間伝承を起源とする「トントゥ」という妖精がいます。
トントゥは森や民家、フィンランド名物サウナまで、様々な場所に住みついている守り神として愛されている存在なのです。
今回はフィンランドに伝わる可愛らしい妖精、トントゥについて解説していきます。
フィンランドの民間伝承に伝わる妖精トントゥ

トントゥ(tonttu)は赤いとんがり帽子を被った、小さな子供のような見た目が特徴の妖精です。
トントゥの起源は、北欧に古くから伝わる民間伝承に登場する妖精となっています。
妖精の名前は北欧各国で異なり、トントゥはフィンランドにおける妖精の名称です。
フィンランドでは「トントゥ」の他に、フィンランド語で「妖精」を意味する「ハルティア(haltija)」と呼ばれることもあります。
フィンランドに伝わる民間伝承によると、トントゥは普段は森や民家の屋根裏に暮らしています。
そして家に住み着いたトントゥは、その家の住民が幸せに暮らせるよう病気や火事から彼らを守ってくれる、守り神のような存在なのです。
北欧の国ごとに妖精の呼び方は異なる

トントゥは古来から北欧で暮らす人々の間で語り継がれてきた、民間伝承に登場する妖精です。
そして民間伝承というのは、元々は同じ意味でも、国や地域を跨ぐことでその場所の文化や風土が織り混ざり独自の特徴を呈するものです。
例えば言葉も同様です。山ひとつ超えると発音やアクセントが大きく変わる、日本語の方言を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。
そのため、「トントゥ」というのはフィンランド版の名称であって、他の北欧の国々では名称も異なっています。
例えば、スウェーデンでは妖精のことを「トントゥ」ではなく、「トムテ(tomte)」という名前で呼んでいます。

また、ノルウェーとデンマークでは、「ニッセ(nisse)」という名称で親しまれています。
このように名称は北欧各国で異なりますが、どの国も北欧の民間伝承に登場する同じ妖精を表しています。
トントゥの仕事は完全分業制

トントゥの特徴として、トントゥの間でそれぞれ得意分野があり、役割分担が明確となっている点が挙げられます。
人間社会で言うところの完全分業制ですね。
例えば、森に暮らし植物や野生動物を見守るトントゥもいれば、人里にある小屋に住み着いて家畜の世話をするトントゥも存在しています。
また、サウナにいるサウナ・トントゥ、サンタクロースのサポートを担うクリスマス・トントゥといった特殊なトントゥまで、フィンランドではバラエティ豊かなタイプのトントゥがいるのです。
サンタクロースの手伝いをするクリスマス・トントゥ

フィンランドのクリスマスシーズンに現れると言われているのが、クリスマス・トントゥです。
北欧ではクリスマスのことを「ヨウル」と言い、クリスマス・トントゥは別名ヨウル・トントゥとも呼ばれています。
クリスマス・トントゥの仕事は、クリスマスに大忙しのサンタクロースのお手伝いです。

クリスマス・トントゥはフィンランドの子供達が、1年間きちんと礼儀正しく良い子で過ごしていたかどうかメモにチェックして、サンタクロースに報告する役割があります。
そしてサンタクロースは、クリスマス・トントゥが報告した子供達のリストを見ながら、「プレゼントを贈る良い子」「今年はプレゼントはお預けの悪い子」というように、どの子供にクリスマスプレゼントを配るかを判断するのです。
また、北欧伝承ではクリスマス・トントゥはフィンランドの「コルヴァトゥントゥリ」という場所で、サンタクロースとトナカイと一緒に暮らしているとも言われています。
サウナ・トントゥはサウナの守り神

日本でも近年愛好家が増えているサウナは北欧フィンランドが発祥です。
本場フィンランドのサウナ人気は凄まじく、多数の公共サウナが街中にあるのはもちろん、多くの家庭にプラベートサウナが設置されているほど。
サウナは現在では、主に体を温める健康施設として利用されています。
しかしフィンランドでは古来から儀式の前に身を清めたり、遺体の洗浄を行うといった神聖な場所として使われてきた歴史があるのです。
そして、トントゥはサウナにも存在しており、サウナ・トントゥという名称で呼ばれています。
サウナ・トントゥはサウナの守り神として知られ、サウナを使う人が楽しく安全に過ごせるよう見守ってくれているという言い伝えがあります。
そしてサウナ・トントゥは、人間がいなくなった一番最後にサウナを利用するのです。
そのためフィンランドの家庭では、サウナ・トントゥがサウナ室で快適に過ごせるように、サウナを使った後はきちんと綺麗に掃除をしておくよう子供達に教育するのだそうです。
また、クリスマス・イブには普段よりも早めにサウナから出て、夜中にサウナ・トントゥがゆっくり滞在できるようにしておくという風習も残っています。

まとめ

北欧の民間伝承に伝わる、小さな守り神であるトントゥ。フィンランドで暮らし人々の間では、トントゥは幸せを運び家族を災いから守ってくれる、大切な存在として親しまれているのです。