デンマーク

【ヤンテの掟】北欧社会の平等性に通じる、デンマークの小説を元にした戒律

ヤンテの掟
Pocket

毎年国連が発表する世界幸福度ランキングにおいて、デンマークやフィンランドといった北欧諸国は常連とも言えます。

北欧社会は高い税負担の一方で、教育費・医療費が無料といった高福祉サービスが国民に等しく還元される仕組みが特徴です。

そのような社会で暮らす北欧の人々の間では、ヤンテの掟と呼ばれる価値観が存在しています。

ヤンテの掟とは北欧の小説を元にした、平等と協調を重視する考え方のことです。

今回は北欧の高い幸福度のヒントとなる、このヤンテの掟について詳しく紹介していきます。

平等と協調を重んじる北欧社会

世界各国の人々の幸福度を示す指標として、「世界幸福度ランキング」という調査があります。

これは国連の非営利団体である持続可能開発ソリューションネットワーク(SDSN)が2012年から毎年発行している調査であり、日本でもよく聞く名前だと思います。

国賓1人当たりの国内総生産(GDP)や健康寿命、汚職の程度といった項目ごとに調査を行い、それらの数値を幸福度として定量化。総合的な数値をもとに国ごとに順位付けをします。

そして最新版の2022年の調査では、146カ国の内、第1位がフィンランド、2位がデンマーク、3位がアイスランドと、北欧諸国が幸福度ランキングの上位を独占する結果となりました。

ちなみにスウェーデンが7位、ノルウェーが8位、日本は54位となっています。

ランキングの詳しい数値を知りたい人は、こちらをご覧ください。(https://worldhappiness.report/ed/2022/

特にフィンランドに関しては5年連続で首位を獲得しており、幸福度という分野における北欧諸国の強さが明らかになりました。

なぜ北欧で暮らす人々は幸せなのでしょうか?

国土全体を覆う豊かな森や湖、スウェーデンのフィーカ(Fika)やデンマークのヒュッゲ(Hygge)を代表とする、ゆったりとしたライフスタイルなど、その要因は様々です。

フィーカ
【フィーカ】スウェーデンのコーヒー休憩スウェーデンには「Fika(フィーカ)」と呼ばれる、コーヒーブレイクの文化があります。スウェーデン人はフィーカの時間になると、一度作業の手を止めて、同僚や家族と一緒にコーヒーとお菓子を食べてリフレッシュをするのです。今回はスウェーデン人にとっては欠かせない生活習慣、フィーカについてご紹介します。...
ヒュッゲ
【ヒュッゲ】心地よさを大切にするデンマーク人の考え方ヒュッゲとは心地よく暮らすことを意味する、デンマーク人が大切にしている価値観です。日本でも近年話題になっているヒュッゲには、不安が蔓延している現代を幸せに生きるためのヒントがたくさん詰まっているのです。今回はデンマーク人が大切にしている、ヒュッゲという考え方について紹介していきます。...

その中で今回注目するのは、北欧社会の平等性です。

北欧諸国は、高福祉・高負担と言われる社会モデルとして知られています。それは皆で税金を払い全員が等しく福祉やサービスを享受するという内容です。

いわゆる「北欧モデル」と呼ばれる国家の福祉政策で、高い税金を払う恩恵として教育費や医療費は無料、他にも様々な福祉サービスを受けられます。

そして、このような政策が成り立つ北欧社会の根底には、「平等」という価値観があります。

少数の人が豊かさを独占する競争社会ではなく、皆が平等に幸福を分かち合う。だからこそ、競争のストレスでギスギスすることなく、国民皆がゆとりある生活を送れるのです。

そして、前置きが長くなりましたが、このような北欧社会の「平等性」を表している言葉として、今回のテーマである「ヤンテの掟」があります。

ヤンテの掟とは?

ヤンテの掟とは、デンマーク出身の作家アクセル・サンデモーセ(Aksel Sandemose  1899年~1965年)が1933年に出版した小説が元となった、平等と他者尊重を重視する慣習的な社会規範のことです。

サンデモーセは1899年にデンマークに生まれ、1930年にノルウェーに移住します。

そして彼は1933年に「En flygtning krydser sit spor(逃亡者はおのが轍を横切る)」という小説を出版します。

ヤンテの掟の「ヤンテ」はこの小説に登場する、架空の村の名前が由来となっています。

サンデモーセの故郷であるモースー島(Morsø)の町ニュクービング(Nykøbing)が、小説のヤンテの村の実際のモデルとなっているようです。

そして小説では、ヤンテの村に暮らす住民が守るべき10個の掟(十戒)が記されており、この戒律がヤンテの掟となります。

ヤンテの掟はデンマーク語では「Jantesloven (ヤンテロウエン)」、英語圏では「The law of Jante」と呼ばれています。

ヤンテの掟の内容

以下に、ヤンテの掟の内容を記載します。

・You’re not to think you are anything special.

自分がひとかどの人物であると思ってはいけない。

 

・You’re not to think you are as good as we are.

自分が我々と同等であると思ってはいけない。

 

・You’re not to think you are smarter than we are.

自分が我々より賢明と思ってはいけない。

 

・You’re not to imagine yourself better than we are.

自分が我々より優れているという想像を起こしてはいけない。

 

・You’re not to think you know more than we do.

自分が我々より多くを知っていると思ってはいけない。

 

・You’re not to think you are more important than we are.

自分が我々を超える者であると思ってはいけない。

 

・You’re not to think you are good at anything.

自分が何事かをなすに値すると思ってはいけない。

 

・You’re not to laugh at us.

我々を笑ってはいけない。

 

・You’re not to think anyone cares about you.

誰かが自分のことを顧みてくれると思ってはいけない。 

・You’re not to think you can teach us anything.

我々に何かを教えることができると思ってはいけない。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヤンテの掟

ヤンテの掟は、自分自身に向ける戒めのような内容となっています。

自分は他人よりも上だという優越感や慢心を厳しく注意し、謙虚な姿勢を持つことを訴えているように感じます。

そしてヤンテの掟はデンマークのみならず、北欧社会に共通する概念と捉えられています。

他人に優越するのではなく、協調性や他者への気遣いを重視する。このような平等性は、確かに今日の北欧の福祉国家モデルにも見ることができます。

ヤンテの掟のメリット・デメリット

ヤンテの掟は、誰か1人が抜きん出るのではなく、皆で等しく豊かさを分け合うという考え方のことです。

自分が他人よりも優れているという高慢さを戒め、平等と協調の意識を育む価値観として、北欧の国民に広く共有されています。

ヤンテの掟は北欧では基本的にはポジティブな意味合いで解釈されているのですが、一方でデメリットも指摘されています。

そのデメリットとは、ヤンテの掟では協調性を大切にしながら、同時に抜け駆けをしてはいけないという同調圧力にもつながってしまうという点です。

集団の平等を追求するということは、見方を変えれば才能と能力のある個人の突出を認めないことでもあります。

日本にも似たような言葉として、「出る杭は打たれる」ということわざがありますよね。

同調圧力の働く集団では、どうしても平等の名の下に個人の自由が制限されます。

その結果として相互監視や閉塞感が漂う、息苦しい社会になってしまうのです。

もちろん、アメリカのような少数の勝者と多数の敗者を生む、過度な競争社会も確かに問題です。

大切なのは、日本人の価値観にも通じる平等重視のヤンテの掟のメリットとデメリットを理解し、上手にバランスをとっていくことだと思います。

まとめ

ヤンテの掟は、デンマークのアクセル・サンデモーセが出版した小説に登場する言葉です。

「自分が他人より優れていると思ってはいけない」「他人より物知りだと思ってはいけない」など、個人の優越を戒める自制的な内容となっています。

そして、この平等と協調性を重んじるヤンテの掟は、今日の北欧社会にも共通する大切な価値観とされています。

ABOUT ME
伊東 琢哉
横浜市に暮らしているフリーライターです。普段はスタバでコーヒーを飲みながら執筆活動をしています。シンプルな北欧デザインや雑貨、自然に魅了され、北欧の情報を日々ブログを通して発信しています。