スウェーデン

【トムテ】北欧の民間伝承に伝わる小さな妖精

トムテ
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北欧に古くから伝わる言い伝えには、トムテと呼ばれる小人のような妖精が登場します。

トムテは農家の屋根裏や納屋に住み、家畜の世話をしたり、住民に幸せをもたらす守り神のような存在です。また、北欧ではサンタクロースの代わりとしても親しまれています。

今回は北欧の心優しい小さな妖精、トムテについてご紹介します。

農家の守り神として愛される、トムテとは?

トムテとは、北欧の民間伝承に登場する小人のような外見の可愛らしい妖精です。

北欧では、トムテは古い農家の屋根裏や納屋に住み着き、家の住民を守ってくれると言われています。

夜中に働き者のトムテが現れ、小屋の掃除や馬の世話、夜番として農場を守るなど、家の手伝いをしてくれます。スウェーデンでは、家の守り神としてトムテの置物を家の中に置く家も多いようです。

しかし、トムテは気難しい性格を持っています。怒らせると家から出て行ってしまったり、悪さをしたりすることがあります。家畜や子供に暴力を振るった場合、トムテは怒って納屋に置いてある物を盗んで出て行く、あるいは農家を殴ったりすることがあると言われています。

トムテの外見はサンタクロースそっくり

心優しいが怒ると怖い、そんなトムテの外見は私たちがよく知るサンタクロースにそっくりです。

民間伝承の中のトムテは、子供のような小さな身長に4本の指、灰色もしくは紺色の服を着ています。

そして何よりも目立つのが、鮮やかな赤色のとんがり帽子、立派に蓄えられた顎髭です。その姿はまるで、小さくデフォルメされたサンタクロースのようですね。

また、北欧では国や地域によって、トムテの呼び方やデザインも少しずつ異なるのも面白いところです。

実は「トムテ」というのはスウェーデン語であり、フィンランドでは「トントゥ」、デンマークとノルウェーでは「ニッセ」と呼ばれています。

見た目も大きく違います。例えば上の写真は、デンマークとノルウェーで親しまれている「ニッセ」です。

ニッセはくりくりとした瞳や豊かな表情がついています。どちらかと言えば、こちらのニッセの方が私たちが連想するサンタクロースにより近い見た目かもしれません。

もちろん、愛称や見た目が違っても、北欧に伝わる妖精たちは古くからの言い伝えとして残り、その家の住民に幸せと繁栄をもたらすという役割は変わりません。

また、フィンランドに伝わる妖精トントゥについても、以下の記事で詳しく紹介しています。

トントゥ
【トントゥ】フィンランドの伝承に登場する働き者の妖精北欧フィンランドには、古い民間伝承を起源とする「トントゥ」という妖精がいます。トントゥは森や民家、フィンランド名物サウナまで、様々な場所に住みついている守り神として愛されている存在なのです。今回はフィンランドに伝わる可愛らしい妖精、トントゥについて解説していきます。...

クリスマスイブにはトムテにご褒美を

街中が赤く輝き出すクリスマス・イブ。実はトムテにとっても、クリスマス・イブは1年間のお仕事を頑張ったご褒美として、特別なイベントとなっています。

北欧ではクリスマス・イブの夜には、トムテへの感謝の気持ちを込めて、テーブルの上に食べ物をそのまま残す習慣があります。これは、仕事をするトムテが住民が寝静まった夜にご馳走にありつけるようにするためなのです。

中でも、トムテの大好物であるミルク粥は欠かせません。このミルク粥はポリッジと呼ばれ、砂糖とバター、ミルクで甘く味付けされています。

クリスマス・イブにミルク粥やたくさんのご馳走を食べることができたトムテは大喜び。ご褒美をもらえたトムテは、クリスマスの後も引き続き住民の幸せのために働いてくれるでしょう。

ただし、ミルク粥の用意を忘れてしまった場合は、トムテの怒りを買ってしまい、報復として様々な悪戯をされてしまうかもしれません。

ちなみに、しょっぱいお粥が一般的な日本人にとっては、甘いお粥と聞いて驚かれるかもしれません。

しかし、北欧ではこのポリッジは朝食としてよく食べられている料理なのです。一緒に蜂蜜やブルーベリーを添えたり、アレンジしたりすることもあるそうで、北欧の人たちにとっては子供の頃から食べている慣れ親しんだ味となっています。

また、トムテの好物であるミルク粥はフィンランドでは「リーシプーロ」と呼ばれ、伝統的に食べられています。

リーシプーロについて知りたい方は、以下の記事も読んでみてください。

リーシプーロ
【リーシプーロ】フィンランドの伝統的なミルク粥フィンランドでは、お米に牛乳と砂糖を加えて煮たリーシプーロというお粥があります。レシピがシンプルなこともあり、フィンランドの家庭で人気の朝食です。日本のお粥のように塩だけで食べることもあれば、フルーツをトッピングするレシピもあり、幅広い楽しみ方ができます。今回は、フィンランドの伝統的なミルク粥「リーシプーロ」の味や作り方、歴史などを紹介したいと思います。「リーシプーロと日本のお粥はどう違うの?」「レシピを詳しく知りたい」という方は、是非参考にしてください。...

クリスマスのユールトムテ

トムテはクリスマスシーズンには「ユールトムテ」となり、子供たちにプレゼントを配って回ります。「ユール」とは、スウェーデン語でクリスマスという意味です。

そしてユールトムテに扮した人は、子供たちにプレゼントを手渡します。その際の格好は、白髭に赤い服を身に着けたサンタクロースとほとんど同じものです。

違う点といえば、北欧のユールトムテはプレゼントを手渡しし、また、ソリを引くのもトナカイではなく、ヤギとなっています。

元々トムテは北欧の民間伝承から生まれた存在であり、キリスト教圏のクリスマスやサンタクロースとは本来は関係ありませんでした。

しかし、過去のスウェーデンのキリスト教化、さらに20世紀に入りアメリカからクリスマスの文化が持ち込まれることによって、クリスマスにプレゼントを届けるユールトムテという現代の風習が広がったと言われています。

まとめ

北欧に伝わる、心優しく、そしてどこか気難しい妖精であるトムテ。

古くから残る民間伝承に起源を持つトムテは、現代になっても北欧の住民に親しまれています。