北欧と言えば、代表的な魚介料理にサーモンが挙げられます。
また、北欧の多くの魚介料理を見ると、緑色の葉っぱが添えられているのに気がつくことがあるかもしれません。
これはディルと呼ばれるハーブで、北欧では魚から肉、野菜料理まで幅広く使用されている食材です。
今回は北欧料理に欠かせない風味豊かなハーブ、「ディル」について解説します。
ディルの基本情報
「ディル(Dill)」はセリ科イノンド属の一年草で、地中海沿岸の西ヨーロッパや西アジアが原産地のハーブです。
全長は約80cmで、葉の先端部分が細かく分かれた形をしているのが特徴です。
ディルの葉は爽やかな芳香をもち、種も「ディルシード」と呼ばれ、主にスパイスとして使用されます。

ディルの強い香りは肉や魚の臭み消しに重宝されますが、別名「魚のハーブ」とも呼ばれるほど、特に魚介料理と相性が良いことで知られています。
北欧では名物と言えるサーモン料理にも、ディルは欠かせない存在となっています。
また、ディルの豊かな香りは、肉や魚以外にもポテトサラダやパンなどにも使用されることがあります。
「Dilla(ジーラ)」という古い北欧の言葉が語源であるように、ディルの香りは昂った気持ちを落ち着かせる効果があるとされています。
古くから人々の生活に使われてきたハーブ

ディルはヨーロッパからアジアに広く分布し、各地で香辛料としてまたは生薬として使用されてきた歴史があります。
エジプトやローマ時代にも使用されていたことが分かっており、また、紀元前3000年のメソポタミア文明時代に作られた粘土板にも、ディルが薬用植物の一つとして刻まれていたと言われています。
さらに、ディルにはリラックスや鎮静作用が期待でき、ヨーロッパの民間療法では、夜泣きした赤ん坊を泣き止ませるために煎じたディルが使用されたとされています。
ディルは北欧でポピュラーな存在
ディルは、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、北欧では家庭料理でよく使われる身近なハーブであり、北欧料理には欠かせない存在です。
スライスしたライ麦パンにクリームチーズとスモークサーモンをのせ、ディルで風味と見た目を整えたサンドイッチは、北欧の定番料理の1つです。
また、スウェーデンで夏の期間に開催されるザリガニパーティ、通称クレフトシーヴァでも、塩茹でしたザリガニに芳醇な風味のディルは欠かせません。
「魚のハーブ」とも称されるディルですが、魚介だけでなく、北欧で主食のように盛んに食べられているジャガイモにも使用されています。
ディルは蒸したり、ローストしたりする調理法にも幅広く使用され、その香りが料理に華を添えてくれます。料理の見た目や味わいを引き立て、食欲をそそる効果もあります。

ディルの料理での使い方
ディルは、肉や魚、野菜料理など様々なジャンルの料理に使われ、北欧だけでなく世界中で活躍しています。
爽やかで鼻に届く強い香りが特徴で、口に入れると若干の苦味と酸味が感じられます。
ディルを料理に使う場合は、葉の先端部分や細かく刻んだ茎を使います。ドライハーブも使用できますが、乾燥すると風味が薄れてしまうため、できるだけ生のハーブを使うのが好ましいです。
ディルの種も利用でき、ディルシードと呼ばれる部分は辛味があり、カレーやピクルスのスパイスとして使われます。

ディルは北欧名物のサーモンのソテーやスープ、ディルサーモンと呼ばれる香草焼きなどの魚介料理に添えられることで、魚の臭みが消え、より食べやすくなります。
また、ディルシードの香りをアクセントとして、フォカッチャなどのパンに練り込んで使用することもできます。
ディルは野菜とも相性が良いため、余ったディルがある場合は、サラダに加えたり、刻んだ葉をお酢やドレッシングに混ぜてサラダにふりかけることもおすすめです。
まとめ
ディルは、北欧料理に欠かせないハーブであり、サーモンやジャガイモ料理、肉料理など様々な料理に使用され、その清涼な風味が料理を華やかにします。
また、日本の魚料理には一般的に山葵や山椒が使われますが、代わりにディルを使用することで、新たな味わいを楽しむことができるかもしれません。