デンマークとスウェーデンは同じ北欧諸国に属しているのですが、両国の間には境界線のように広がるエーレスンド海峡という海があります。
かつて両国の移動の際は船を使う必要がありましたが、今日ではオーレスン・リンクという海上に架かる巨大な橋を渡って、30分足らずで行き来できるようになっています。
ここではデンマークとスウェーデンを結ぶ橋であるオーレスン・リンクについて、橋の詳しい特徴や完成までの経緯について取り上げていきます。
2国間を繋ぐ海上の橋、オーレスン・リンク

スウェーデンとデンマークの間には、両国を隔てる国境のように広がるエーレスンド海峡という海峡があります。
そして今回紹介するオーレスン・リンクは、エーレスンド海峡の海上に建つ巨大な橋のことです。
スウェーデン南部の都市マルメとデンマークの首都コペンハーゲンにあるシュラン島を結ぶ連絡橋であり、全長は約16kmです。
橋の上部が車道、下部が鉄道という2段構成になっているのが特徴で、鉄道道路併用の橋としてはヨーロッパ最大となっています。

オーレスンリンクはスウェーデンとデンマークの間に架かる橋ですが、その運営は両国政府によって共同で行われています。また、利用の際は通行料金もかかります。
「オーレスン・リンク」という名称は英語表記での呼び方であり、北欧での正式名称は橋を意味する「ブロン」に由来する、「オーレスンブロン」です。
オーレスン・リンクは他にも、エーレスンド橋、オーレスン橋、エーレスンド・ブリッジなど様々な名前で呼ばれています。
橋は地上部分と海底トンネル、人工島で構成される

オーレスン・リンクはエーレスンド海峡の上に見える実際の橋に加え、海峡の中心部にある人工島ペベルホルム島、そして海底トンネルから構成されています。
ペベルホルム島はオーレスン・リンクの中継地点であり、エーレスンド海峡上に埋め立てで作られた全長4kmの人工島です。
ペベルホルム島を起点とすると、スウェーデンが位置するスカンジナヴィア諸島側からペベルホルム島までは約8kmの橋となっています。
逆にデンマーク側からペベルホルム島までは約4kmの海底トンネルとなっています。
デンマークからスウェーデンへ向かう場合は、まず海底トンネルを通り、その後に地上にかかる橋を通っていく特徴的な設計になっています。
通行を巡るエーレスンド海峡の歴史

ここではスウェーデンとデンマークの間に流れるエーレスンド海峡に焦点を当てて、海上の通行税を巡る歴史について紹介していきたいと思います。
エーレスンド海峡は、バルト海と北海の間にあります。
そのため、エーレスンド海峡は古くから海運貿易の主要経路として利用されるなど、地理的に重要な場所にありました。
この点に目をつけたのが15世紀当時のデンマークを統治していた、デンマーク王エーリク7世という人物です。
エーリク7世は1429年にエーレスンド海峡を利用する船舶に対し、エーレスンド海峡通行税と呼ばれる通行税を徴収するようになります。
当時のエーレスンド海峡は貿易の主要航路として数多くの貿易船が往来していたため、徴収する通行税も膨大な金額となりました。
その額は当時諸外国との戦争で疲弊していたデンマーク経済を潤し、大きく立て直すほどだったといいます。
一方でバルト海と北海をつなぐほぼ唯一の経路であったエーレスンド海峡の通行税は、徴収される側としてはたまったものではありません。
特に隣国スウェーデンとは、海峡の通行税を巡ってかなり険悪な仲となっていたのだとか。
デンマークが設けたこのエーレスンド海峡通行税は、1857年3月にエーレスンド海峡条約という、海峡を国際水路として通行税の廃止を定めた条約が締結されるまで徴収されました。
つまり、エーレスンド海峡通行税は、400年間以上に渡って効力を発揮し続けたのです。
ちなみにデンマーク王エーリク7世がエーレスンド海峡通行税の徴収拠点として建築したのが、デンマークにある名城、クロンボー城です。
クロンボー城に関してはこちらの記事でまとめてあるので、是非読んでみてください。

オーレスン・リンク完成までの経緯

次に、デンマーク経済を活性化させる一方で多くの貿易商人らの悩みの種でもあったエーレスンド海峡通行税が撤廃されてから、オーレスン・リンク完成までの経緯を見ていきましょう。
エーレスンド海峡通行税のせいで何度も揉めた仲のスウェーデンとデンマークですが、その後は協力しあい、海峡の共同運営を進めていくこととなります。
19世紀後半には、両政府で海峡を繋ぐ新設備の建設について検討が始まります。
というのも、元々エーレスンド海峡間にはフェリーが運航していましたが、冬になると海が凍結してしまいアクセスが制限されるという課題があったからです。
ただ、両国間の話し合いはかなり難航したのか、正式に橋の建築が決定したのは1991年のことです。
1995年には工事が始まり、デンマークのCOWIという会社と建築家のジョージ・K・S・トロネによって建築が進められました。
そして工事開始から5年後の2000年7月1日に、無事開通を迎えることとなります。
完成を記念する式典にはデンマークからは女王マルグレーテ2世、スウェーデンからはカール16世グスタフ国王が出席し、両国をあげて盛大に開通を祝いました。
まとめ

ここまでスウェーデンとデンマークを結ぶ橋であるオーレスン・リンクについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
かつて両国を隔てていたエーレスンド海峡にオーレスン・リンクが架かることによって、アクセスも大きく改善することとなります。
何よりオーレスン・リンクの存在はスウェーデン・デンマークの友好を象徴する架け橋として、両国の関係性もより強く親密になりました。
今日でも大勢の人や車両がオーレスン・リンクを渡り、スウェーデン・デンマーク間を気軽に行き来しています。
オーレスン・リンクはデンマーク国際空港にも直結ということなので、観光の際には是非利用してみましょう。
