大西洋に浮かぶアイスランドは、北欧の島国であり、国の一部が北極圏に属しています。
火山活動による地熱や暖流の影響で比較的温暖な気候ですが、やはり冬場は寒さが厳しくなります。
そのような過酷な環境下で、暮らしを快適にするためにアイスランドでは、古くからロイヴァゥスという住宅が作られてきました。
この記事では、アイスランドの伝統的な住宅であるロイヴァゥスの特徴や機能について解説します。
芝生屋根が特徴のロイヴァゥス
寒冷な気候に適した伝統住宅であるロイヴァゥス（Laufás）は、アイスランド北西部のエイヤフィヨルズル沿岸地帯に見られます。
ロイヴァゥスの最大の特徴は、屋根一面に芝生が敷き詰められた建築様式であることです。
緑豊かな屋根の住宅は、とても可愛らしい外観をしており、まるでおとぎ話の世界から抜け出てきたような印象を受けます。また、日本の茅葺き屋根の家にも似た雰囲気がありますね。
ロイヴァゥスの建築構造は、まず屋根の土台として北欧に自生する白樺などの木の樹皮を敷き、その上に土を被せて芝生を植えます。
アイスランドは温帯でありながら背の高い木が育ちにくいため、建築用の木材を確保するのが困難でした。そのため、比較的耐寒性がある芝生や苔を建築資材として利用したのです。
ロイヴァゥスが持つ断熱効果
自然と住居が調和したロイヴァゥスは、ファンタジーの世界に出てきそうな美しい外観をしています。
しかし、アイスランドの寒さに対処するために設計された、高度な知恵と機能性が詰まった建築です。
ロイヴァゥスの屋根には、厚みのある芝生と土が使われており、これらは天然の断熱材として機能します。
この構造によって、冬でも屋内は暖かく保たれます。さらに、植物の蒸散作用によって熱が逃げるため、夏には涼しく過ごすことができます。
つまり、ロイヴァゥスの芝生屋根は美しいデザイン性とともに、実用性も兼ね備えた建築なのです。
スコゥガル民族博物館でも見学可能
アイスランドでは現在、鉄筋コンクリート製などの近代住宅が一般的となり、新しくロイヴァゥスが建造されることはありません。
それでもロイヴァゥスは、当時のアイスランド人の生活様式を垣間見られる貴重な伝統住宅として、その歴史的価値は非常に高いと言えます。
そしてロイヴァゥスは、現在ではアイスランドの観光名所となっています。
例えばアイスランド南部のスコゥガルには、「スコゥガル民族博物館」という野外博物館があり、ここではロイヴァゥスが展示品としてそのまま現存しています。
スコゥガルはアイスランドの首都レイキャビクから南東に約150kmの場所にあり、車で2〜3時間ほどの距離です。
そのため、遠くのエイヤフィヨルズル沿岸まで行かなくても、スコゥガルの博物館で簡単にロイヴァゥスを楽しむことができます。
まとめ
アイスランドの伝統的な家であるロイヴァゥスは、特徴的な芝生の屋根が特徴的です。
この屋根には断熱効果があり、夏や冬でも快適に過ごすことができるとても実用的な住宅です。
現在、ロイヴァゥスはアイスランド北西部のエイヤフィヨルズル沿岸地帯に残っています。また、南部にあるスコゥガル民族博物館にも展示されており、ロイヴァゥスの特徴的な外観や構造を見ることができます。
