フィンランドのヘルシンキには、フィンランドを代表する偉大な作曲家ジャン・シベリウスをモチーフにしたシベリウス公園という場所があります。
シベリウス公園は、白樺の木々や季節の花々が咲き誇り、ヘルシンキ市民の憩いの場となっています。また、公園内に設置されたモニュメントが独創的なデザインであることでも有名です。
今回は、フィンランドを代表する作曲家シベリウスにちなんだスポット「シベリウス公園」の特徴や歴史についてご紹介します。
シベリウス公園の特徴
シベリウス公園(Sibeliuksen puisto)は、フィンランドの首都ヘルシンキのトーロ地区にある公園です。
シベリウス公園は、フィンランドで最も有名な作曲家ジャン・シベリウスの生誕80周年を記念して建設されました。
前身となる公園はすでに存在し、当初は20世紀にヘルシンキ再開発計画の一環として設立された「ホップ公園」と呼ばれていました。
1945年、当時フィンランド国内外で高い評価と知名度を誇っていたジャン・シベリウスの生誕80周年を記念して、現在の「シベリウス公園」に改名されました。
パイプオルガンの記念碑がシンボル
シベリウス公園のランドマークは、公園の北側にあるステンレス製のパイプでできたモニュメントです。
シベリウス・モニュメントと呼ばれるこのモニュメントは、女性彫刻家エイラ・ヒルトゥネンがデザインし、1967年にシベリウス公園に寄贈されたものです。
モニュメントに使われているステンレスパイプの数は600本を超え、総重量は約2.4トンにもなります。
写真では小さく見えますが、高さは8.5メートルもある巨大なモニュメントなのです。
記念碑の下には人が一人通れるほどのスペースがあります。記念碑の中に立って耳を澄ませば、オルガン独特の音の響きを楽しめます。
最も目を引くのは、そのユニークな形です。
多数のステンレスパイプで構成された芸術的なデザインは、見る者にさまざまなイメージや感動を呼び起こします。
製作者のエイラ・ヒルトゥネンによると、このモニュメントは「森」をイメージしてデザインされたそうです。
シベリウスの顔の彫刻の複雑な背景
独創的なデザインと優れたステンレスの質感を持つモニュメントは、シベリウス公園の代表的なシンボルであり、多くの人が写真撮影に訪れる場所となっています。
そして、モニュメントの他にシベリウス公園のシンボルとなっているのが、人の顔の肖像画です。
この彫刻の顔のモデルは、シベリウス自身だと言われています。
今では公園のシンボルとなっているシベリウスの顔の肖像画ですが、先に紹介したシベリウス・モニュメントの設置の背景に関係する、複雑な事情がありました。
複数のパイプを組み合わせた無機質で独特な造形のモニュメントは、設置当初は一部の人にしか受け入れられませんでした。
もちろん肯定的な意見もありましたが、それ以上に批判の声もかなり多かったと言われています。
その独特で捉えどころのないデザインから、「抽象的すぎて何を表現しているのかわからない」と設置に疑問や批判を投げかける人もいました。
こうした批判的な意見を受けて、急遽、シベリウスの顔の彫刻が追加されました。
モニュメントに向けられた批判をかわすため、より公園のコンセプトに沿ったシベリウスの顔をモチーフにした作品を配置したのです。
ジャン・シベリウスとは?
シベリウス公園は、フィンランドの国民的作曲家、ジャン・シベリウス(1865-1957)にちなんで名づけられました。
シベリウスは、ヘルシンキ大学で法律を学んでいました。しかし、その後音楽に目覚め、ヘルシンキ音楽院で作曲を学びました。
シベリウスが作曲した音楽は、フィンランドの自然や民俗を表現した作品が多いのが特徴です。
フィンランドの民話叙事詩「カレワラ」をモチーフにした「クレルヴォ」や、代表的な交響詩「フィンランディア」など、現在でもフィンランド国民に聴かれている名作を多く残しています。
特に 「フィンランディア」はフィンランドでは愛国歌として、国家に匹敵するほど親しまれています。
シベリウスが「フィンランディア」を発表した当時、フィンランドはロシア帝国の支配下にありました。
シベリウスが作曲した「フィンランディア」は、フィンランド国民の意識を一つにまとめ、民族の独立に向けて活気づかせたと言われています。
独立から100年以上たった今でも、彼の作曲した「フィンランディア」は、フィンランドの人々にとって特別な愛国的意味をもっています。
まとめ
ヘルシンキ北西部の海沿いにあるシベリウス公園は、フィンランドの偉大な作曲家ジャン・シベリウスにゆかりのある公園です。
園内にあるパイプオルガンによる記念碑も特徴的なスポットとなっています。音楽好きなら、一度は訪れてみたい公園です。