ノルウェーで12世期に建てられ、1979年に世界遺産としても登録された「ウルネスの木造教会」。
北欧の自然が作り出した美しい入江の景色を望む位置にあり、国内外から多くの人がその姿を見に足を運ぶスポットでもあります。
今回は北欧ノルウェーの歴史的建造物であり、荘厳な佇まいと独特な装飾が魅力のウルネスの木造教会を紹介していきます。
ウルネスの木造教会の基本情報
ウルネスの木造教会は、北欧ノルウェーの南西部ソグン・オ・フィヨーラネ県に建設された木造教会です。
手付かずの美しい自然が残る辺境の場所にあり、高さ120mの崖の上にウルネスの木造教会はあります。
また、教会が建つ場所からはルストラフィヨルドと称される氷河や湖が生み出す美しい入江(フィヨルド)を望むことができ、人気の景勝地の1つとされています。
北欧の雄大な自然を背景に、崖の上に凛々しく佇むその姿から、別名「スターヴヒルケの女王」とも呼ばれています。
スターヴとはノルウェー語で「垂直に立った支柱」、ヒルケは「教会」という意味です。
現存するスターヴ教会では最古の建物
ウルネスの木造教会は、ノルウェー独特の建築方式であるスターヴ教会の一種です。
スターヴ教会とは、土台梁の上に垂直に支柱を立て、周囲を木製の板で囲い建設された建造物で、日本の法隆寺五重塔と同様の建築物として知られています。
ウルネスの木造教会は、ヴァイキングの造船技術を応用して、釘を1本も使わずに全て木材のみで造られている点が特徴的です。
建設されたのはおよそ900年前の12世紀で、現存するスターヴ教会の中では最も古い教会の一つです。最盛期にはノルウェーに1000棟ほどあったと言われていますが、現在はそのうち28棟しか残っていません。
1979年には、ウルネスの木造教会はユネスコ世界遺産にも登録されました。
ウルネス様式特有の模様が特徴
ウルネスの木造教会は、降雪量が多いノルウェーの気候に合わせて、鱗状の凹凸が施された急勾配の屋根となっています。
教会内部には、信者に説教を行うための講壇などもあり、祭壇には1699年に描かれたという十字架に張り付けにされたキリストの絵画も飾られています。
そして、ウルネスの木造教会でも最も特徴的なのが、入り口の北側の壁に施された独特な模様です。蛇と何かの動物が蔓のように複雑に絡まり合っているように見えるこの模様は、ウルネス様式と呼ばれています。
ウルネス様式は、土着のヴァイキング様式と、国外から伝来したキリスト教様式が合わさったデザインです。
この特徴的な装飾が何を意味しているのかは諸説あり、現在でもその解釈は分かれています。有力な説は主に2つあります。
まずはキリスト教的解釈において、キリストを意味するライオンが、サタンの象徴である蛇と闘っている、善と悪の闘いだという説。
もう一方は北欧神話的解釈で、神話に登場するユグドラシルの木にドラゴンが噛み付いているという説です。
ユグドラシルの木とは北欧神話によると、9つの世界を超える支える、全ての世界の大元である巨大な1本の樹木として描かれています。
ユグドラシルの木は、日本では世界樹の木と言った方がピンとくる人は多いかもしれません。日本のアニメやゲームでも名前が出ることが多いこちらの木は、元々北欧神話が発祥です。
ウルネスの木造教会は12世紀の建造物ということもあり、設計者が何を思ってこのウルネス様式の装飾を作ったのかは、文献もなく不明なままです。
しかし、わからないからこそ興味をそそられる部分もありますよね。色々な仮説を想像しては議論を重ねるのも、観光の1つの楽しみ方なのではないでしょうか。
まとめ
ウルネスの木造教会は、北欧ノルウェーにある12世紀から今なお残る伝統的な木造教会であり、国内でも有数の観光スポットです。
周囲に広がる大自然ともマッチした美しい佇まいを堪能しながら、その歴史に思いを馳せてみましょう。