北欧には、美しい赤い実をつけるリンゴンベリーというベリーがあります。
寒冷地でも丈夫に育つリンゴンベリーは、冬の貴重な栄養源として北欧で古くから食べられてきました。
リンゴンベリーはジャムやソースに加工されることが多く、北欧ではリンゴンベリージャムは様々な料理のトッピングとして使われています。
今回は、北欧で親しまれている小さな果物、リンゴンベリーの特徴を紹介したいと思います。
リンゴンベリーの特徴
リンゴンベリーは、鮮やかで艶やかな赤い実が特徴のベリーの一種です。
ブルーベリーと同属の常緑低木で、主に北欧の寒冷地に生育しています。
リンゴンベリーは日本では「コケモモ」とも呼ばれています。コケモモという和名の由来は、リンゴンベリーが地面近くで枝葉を密集させて自生する様子が、まるで苔が生い茂る光景に似ていることから、「苔桃(コケモモ)」という呼称になったといいます。
スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国では、リンゴンベリーは最も身近なベリーの一つです。
北欧の家庭では古くから森に自生するリンゴンベリーを収穫し、ジャムやソースに加工してパンに塗ったり、肉料理の付け合わせにしたりしてきました。
リンゴンベリージャムは、爽やかな甘酸っぱさが特徴で、こってりとした肉料理や魚料理によく合います。
また、リンゴンベリーはポリフェノールやビタミンEを豊富に含み、その高い栄養価から近年スーパーフードとして注目されています。
自然豊かな北欧では、少し森に入るだけで、リンゴンベリーやブルーベリーなどの野生のベリーがあちこちに見られます。
北欧では「自然享受権」という法律があり、森への自由なアクセスと活動が認められています。
そのため、北欧に住む人々は、近所の森を訪ね、自由にリンゴンベリーの採取ができます。
フィンランドで開催される「ベリー摘み世界選手権」も、野生のベリーが身近にある北欧ならではのイベントです。
リンゴンベリーの生育地
リンゴンベリーは、-40℃の低温にも耐える耐寒性があり、痩せた土地でもよく育ちます。しかし、その反面、暑さには弱いです。
リンゴンベリーの主な生息地は寒冷地に集中しており、北欧諸国、ロシアなどユーラシア大陸北部、アラスカ、北アメリカなどが原産国となっています。
日本にも自生しており、北海道や九州地方の高地が生息地として知られています。
しかし、日本では生育地が限られており、鳥取県が条例で特定希少野生動植物種に指定するほど、採取が厳しく制限されています。
ジャムやソースに加工して保存するのが一般的
北欧では、リンゴンベリーを生で食べることはあまりありません。
ジャムやソース、コンポートなどの加工食品に加工したり、冷凍したりするのが一般的です。
これは、生のリンゴンベリーは酸味が強く、生食に向かないためです。
生で食べる代わりに砂糖と一緒に煮て酸味を中和し、ジャムにして食べています。
家庭でリンゴンベリージャムを作るには、リンゴンベリーをたっぷりの砂糖と一緒に煮詰めます。
お店で市販されているようなジャムには通常、保存料が一緒に添加されています。
しかし、リンゴンベリーには安息香酸という成分が含まれており、乳酸菌やカビなど発酵を促進させる微生物の繁殖を防いてくれます。
そのため、自家製のリンゴンベリージャムは、人工的な添加物を使用しなくても比較的長く保存できます。
最高級のリンゴンベリーとなると、調理せずに生のまま砂糖と混ぜて瓶詰めのジャムにするようです。
北欧では料理の付け合わせに使用
リンゴンベリージャムは、日本ではまだ馴染みが薄いかもしれません。
しかし、北欧ではどの家庭にも常備されている定番のジャムなのです。
リンゴンベリーは、北欧で古くから親しまれてきた食材です。
北欧の寒冷地では、冬になると作物がほとんど育たず、特に保存技術が発達していなかった昔は、冬場のビタミン不足が大きな問題でした。
耐寒性を持つリンゴンベリーは、冬の貴重なビタミン源として高く評価されてきた歴史があります。
こうした背景から、リンゴンベリージャムは現在でも北欧の伝統料理には欠かせない食材となっています。
また、リンゴンベリージャムはケーキや朝食のパン、肉・魚料理などに添えられています。
日本よりも肉料理を多く食べる北欧やヨーロッパ諸国では、肉料理と甘いジャムの組み合わせが主流です。
日本人から見ると驚かれる肉の食べ方ですが、ジャムの甘みと酸味が肉の脂っこさを緩和してくれるので、意外と相性はいいのだそうです。
その代表格が、スウェーデンの伝統料理であるミートボールです。
スウェーデンの国民的家庭料理であるミートボールには、マッシュポテトとホワイトソースに必ずリンゴンベリーがトッピングされています。
リンゴンベリージャムは、他にもブラッドソーセージやポテトケーキなど、北欧の伝統的な料理のソースとして使われています。
日本でリンゴンベリーを楽しむには?
日本でリンゴンベリーを楽しむには、インターネット通販を利用するか、IKEAやカルディコーヒーファームなどの輸入食料品店で市販のリンゴンベリージャムを購入するのがおすすめです。
全国のIKEAでは、瓶入りのリンゴンベリージャムがお手頃価格で販売されています。
そのため、手軽に本場北欧の味を体験することができます。
自宅のキッチンでリンゴンベリージャムの味を再現したい場合は、甘酸っぱさが似ているラズベリーで代用も可能です。
まとめ
リンゴンベリージャムはスウェーデン名物のミートボールをはじめ、北欧の伝統料理には欠かせません。
原材料のリンゴンベリーも北欧の森に自生しており、どこの家庭でもジャムを常備しているほど身近な存在です。