【グルントヴィ教会】クリント家が手がけたデンマークの教会
デンマークの首都コペンハーゲンにはグルントヴィ教会という教会があります。
この教会はデンマークの哲学者ニコライ・グルントヴィの記念碑として1940年に建てられたものです。
そして教会を設計したのは、現在デンマークを代表する北欧家具・照明ブランド「LE KLINT」を設立した一家です。
この記事ではグルントヴィ教会の特徴や歴史、教会を設計したクリント家について、詳しく紹介していきます。
グルントヴィ教会の特徴
グルントヴィ教会は、1940年にデンマークのコペンハーゲン市ビシュペビャー地区に建てられました。
グルントヴィ教会という名称は、デンマークの哲学者ニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィにちなんで命名されました。
この教会は、哲学者ニコライ・グルントヴィの追悼を目的に建てられたものです。
教会の建設は、デンマークの建築家ペーダー・ヴィルヘルム・イェンセン・クリントによって1913年に開始されました。
彼の息子であるコーア・クリントが建設を引き継ぎ、1940年に完成を迎えます。
グルントヴィ教会は高さ49mの垂直なファサードと、凹凸のある階段状の屋根が特徴的な外観を持つ教会です。
教会のデザインには、表現主義様式という建築様式が採用されています。
表現主義とは、20世紀初頭のヨーロッパ、特にドイツで興った芸術様式です。
かつてヨーロッパで主流だった印象派が外界を表現したのに対し、表現主義は感情などの内界を描くのが特徴です。
グルントヴィ教会を設計したクリント家
グルントヴィ教会はP.V.イェンセン・クリントとコーア・クリント、二代にわたるクリント家によって建設されました。
1913年に着工しましたが、翌1914年に第一次世界大戦が勃発すると工事は中断し、7年後の1921年4月に工事を再開しました。
1926年には基礎工事が完了し、1927年にイェンセン・クリントが亡くなると、息子のコーア・クリントが事業を引き継ぎました。
コーア・クリントは内装工事を担当し、グルントヴィ教会は着工から27年後の1940年に完成しました。
グルントヴィ教会を設計したイェンセン・クリントは、「デンマークのモダンデザインの父」とも呼ばれる著名な建築家です。
イェンセン・クリントは50代で建築家としてのキャリアをスタートさせ、以来、数々の名作を生み出してきました。
彼はデンマークの伝統建築をベースに、階段状の切妻屋根(最も一般的な三角屋根)を持つ建物など、斬新な建築を数多く設計します。
息子のコーア・クリントも父と同様、デザイン業界では有名で、「デンマーク家具デザインの父 」と呼ばれています。
デンマーク王室御用達の照明ブランド「レ・クリント」
クリント家は、デンマークの北欧照明ブランドとして有名なLE KLINTの創業家です。
グルントヴィ教会の設計者であるP.V. イェンセン・クリントは教会以外にも多くの作品を手掛けており、そのひとつが日本の折り紙をモチーフにしたランプシェードです。
ランプシェードは規則正しく折られたデザインと光の陰影の美しさが特徴です。
1943年、イェンセン・クリントの息子であるターエ・クリントによって、ランプシェードを広めるためにLE KLINTが設立されました。
その後、LE KLINTは、創業者ターエ・クリントの弟で、父イェンセント・クリントと共にグルントヴィ教会を手がけたコーア・クリントによって急速に拡大します。
現在、LE KLINTの製品は、デンマーク王室御用達に選ばれるほど、北欧を代表するブランドになっています。
光が照らす美しい教会内部
グルントヴィ教会の内部は、表現主義のモダンな幾何学様式とゴシック様式のレンガを取り入れた美しい内装になっています。
窓から淡い光が差し込み、神々しく幻想的な雰囲気を醸し出しているのも魅力的です。
グルントヴィ教会の内装は、デンマークの伝統的な建築材料である黄色いレンガで造られており、その数は約600万個にも及びます。
グルントヴィ教会の本堂は全長76メートル、座席数は1,400以上と、教会としてはかなり大規模なものです。
そして、祭壇に向かって配置されたビーチ材の座席も、先ほど紹介したコーア・クリントのデザインによるものです。
教会内には、全長11メートル、パイプ数4052本という北欧最大のパイプオルガンがあります。
礼拝のほか、パイプオルガンの美しい音色を楽しめる音楽コンサートも定期的に開催されています。
グルントヴィ教会は入場無料なので、コペンハーゲンを訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてください。
まとめ
ここまでデンマークのグルントヴィ教会について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
グルントヴィ教会は、北欧デザインの洗練された照明や家具で有名なデンマークのLE KLINT社の創業家によって設計されました。
デンマークを訪れた際には、表現主義様式を取り入れた教会の荘厳な佇まいを楽しんでみてはいかがでしょうか。