デンマーク

【クロンボー城】ハムレットの舞台となったデンマークの城

クロンボー城
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デンマークのバルト海の海岸線沿いに建築され、城壁や大砲が当時のまま残るクロンボー城。

かつては海峡を通行する船から税を徴収する要所として建てられ、現在でも世界遺産としてデンマーク有数の名所として人々を魅了し続けています。

また、劇作家シェイクスピアの代表的傑作ハムレットの舞台となった城でもあるのです。

今回は600年以上もの歴史を紡いできた、デンマークのクロンボー城について紹介します。

デンマークにある世界遺産、クロンボー城とは?

北欧デンマークのシェラン島北東部にある美しい港町、ヘルシンオアには、クロンボー城があります。

デンマーク語で城を意味する「ボー(bor)」を含む名称で、現地デンマークではそのまま「クロンボー」と呼ばれています。

クロンボー城は、1420年代に前身となる砦がヘルシンオアに建築され、600年以上にわたりバルト海に面したこの場所に構えてきました。

クロンボー城とスウェーデンの対岸の街ヘルシンボリの間には、幅約7kmのエーレスンド海峡があり、両国はフェリーを利用すれば20分ほどで往来することができます。

城が建築された当時の15世紀のデンマークにとって、ヘルシンオアは海運交通の要所であり、クロンボー城は船からの通行税を得るために建てられたと言われています。

現在でも、堅牢な城壁や海に砲口を定めた大砲が残り、バルト海に臨む要塞としてデンマークの歴史を伝える名城とされています。

デンマークの歴史を語るための重要な古城として、2000年にはユネスコの世界遺産に登録されました。

海峡通行税の徴収のための拠点

先述の通り、デンマークのクロンボー城は15世紀に設置され、元々はエーレスンド海峡を通行する商船などから通行税を徴収するために建てられました。

当時、デンマークは外国への出兵の失敗などにより財政や政情が不安定となっていました。そのため、海運交通の要所であるバルト海の海岸線を拠点に、エーレスンド海峡通行税を徴収する政策が立てられました。

通行税を払わなかった人は、クロンボー城に設置された砲台から容赦なく砲撃を受けることになったという逸話も残っています。

しかし、海運交通の要所であったエーレスンド海峡に通行税を設ける政策は成功し、デンマーク経済に大きな収入をもたらしたとされています。

シェイクスピアの傑作「ハムレット」の舞台

クロンボー城は、16世紀を代表するイギリスの劇作家であるウィリアム・シェイクスピアが残した戯曲『ハムレット』の舞台としても知られています。

シェイクスピアが書いた4大悲劇『オセロー』、『マクベス』、『リア王』、そして『ハムレット』を鑑賞した、あるいはその名前を知っている人は多いはずです。

「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」という、ハムレットの有名な台詞はあまりにも有名です。

4大悲劇の中でも特に傑作とされる『ハムレット』に登場した「エルシノア城」のモデルとなったのがこのクロンボー城なのです。

なお、シェイクスピア自身はデンマークを訪れたことはなかったそうですが、クロンボー城内外にはシェイクスピアや『ハムレット』に関連する品々を見ることができます。

現在でも城内の大ホールの一角には、舞台『ハムレット』の演劇で使われた衣装が展示されています。また、北東側の壁にはシェイクスピアの胸像レリーフも施されています。

ハムレットに魅せられた原作ファンなら、一度は訪れてみたい場所ですね。

クロンボー城が辿ってきた歴史

クロンボー城は、1420年代に当時のデンマーク王7世がその前身となる砦を現在の場所に建てたことが始まりとされています。

その後、1574年から1585年にかけて、フレデリク2世の命令により、要塞強化の目的で大規模な改築が行われました。

ちなみに、フレデリク2世は同じくデンマークを代表する城であるフレデリクスボー城を築いた王としても知られています。

フレデリク2世が着手した改修工事は1585年に終わりを迎え、15世紀にエーリク7世が建造した砦はこの時からクロンボー城という名前になったと言われています。

そして、城が現在の姿となったのはさらに年月が過ぎた1924年です。

静かに海に臨む、風格ある堂々とした佇まいが魅力のクロンボー城ですが、過去には何度か不運な出来事にも遭遇してきました。

1629年には城内で火災が起き、大きな損害を被ります。しかし火災後には、デンマーク王クリスチャン4世の手によって初期バロック様式を取り入れる形で見事に復興を果たしました。

ただし不幸はこれだけに留まらず、1658年にはスウェーデンの侵攻によって落城。1772年にはクーデターが起き、当時のデンマーク王クリスチャン7世の妃であったカロリーナ・マティルデが城内に幽閉されたこともありました。

今の美しい姿からは想像できない苦難の歴史の舞台ともなってきたクロンボー城。誉れ高い佇まい・経歴と同時に悲劇も背負ったその姿は、復讐の物語である『ハムレット』にもどこか通じる部分があるのではないでしょうか。

観光名所としてのクロンボー城

クロンボー城は、デンマークの首都コペンハーゲンから電車で約1時間の距離にあり、観光名所としても人気となっています。

城内では18世紀から19世紀の調度品や芸術品が展示されています。また、ハムレットの関連文献やコレクションも見ることができ、演劇ファンにとっても見応えのある内容となっているそうです。

また、ハムレットの舞台となった城ならではの演出なのか、クロンボー城の中では専門のスタッフによる、ハムレットの1シーンを再現した寸劇を所々で見ることができるそうですよ。

クロンボー城は礼拝堂もおすすめのスポットと言われています。

礼拝堂には祭壇や説教台、パイプオルガンといった設備があり、金色が随所にあしらわれた煌びやかな内観となります。

礼拝堂の装飾はフレデリクス2世の代に装飾されたもので、1629年に見舞われた火災でも城の大半が焼け落ちた中でもこの礼拝堂はほとんど無事でした。

そのため現在でも、建築当時の装飾や雰囲気を感じることができるそうです。

クロンボー城の中庭では、毎年夏の時期になると「HAMLET SUMMER」というシェイクスピアの野外劇が上演されています。

また、1760年代に実際に使用されていた12ポンド砲も保管されており、現デンマーク女王マルグレーテ2世の誕生日である4月16日には、デンマーク軍によって大砲で礼砲が放たれます。

まとめ

デンマークの港町ヘルシンオアの海岸沿いに佇む古城である、クロンボー城。

隣国スウェーデンとの間に流れるエーレスンド海峡を通行する船から通行税を徴収する拠点として、あるいはシェイクスピアの戯曲ハムレットの舞台となった城として、古今問わずデンマークで重要な役割を果たしている城なのです。