【スウェーデン語文法#50】否定表現のバリエーション

スウェーデン語の否定といえば inte(〜ない) が出発点です。しかし実際の会話では、「もう〜ない」「まだ〜ない」「決して〜ない」など、場面に応じた豊かな否定表現が使われます。
これらを正しく使い分けられると、表現が自然になり、スウェーデン語の理解も一段と深まります。
今回は、基本の inte に加え、スウェーデン語で頻出の否定表現を詳しく解説していきます。
1. inte:否定の基本
inte は最も一般的な否定語で、英語の not にあたります。動詞や形容詞を否定する役割を持ち、語順の中では動詞と密接に関わります。
- Jag förstår inte.(私は理解しません)
- Han är inte hemma nu.(彼は今、家にいません)
inte の位置として、主に動詞の直後や補語の前に置かれます。
2. inte längre:「もう〜ない」
inte längre は「もう〜ない」を意味し、時間の経過による変化を表します。英語の no longer に対応します。
- Hon arbetar inte längre här.
(彼女はもうここで働いていません) - Vi är inte längre vänner.
(私たちはもう友達ではありません)
ここでのポイントは、inte が否定を担い、längre が「これ以上」「もはや」というニュアンスを加えることです。
組み合わせることで「以前はそうだったが、今は違う」という意味合いになります。
3. inte än:「まだ〜ない」
inte än は「まだ〜ない」を表す表現です。未来や進行中の状況に使われ、英語の not yet に対応します。
- Bussen har inte än kommit.
(バスはまだ来ていません) - Jag har inte än bestämt mig.
(私はまだ決めていません)
時間に関する文脈でよく用いられるため、会話で頻繁に登場します。
4. aldrig:「決して〜ない」
aldrig は「決して〜ない」「一度も〜ない」を意味します。強い否定や習慣の否定に使われます。
- Jag har aldrig varit i Sverige.
(私は一度もスウェーデンに行ったことがありません) - Han ljuger aldrig.
(彼は決して嘘をつきません)
ここで注意したいのは、inte を使わずに単独で否定を表す点です。強調のニュアンスが加わるため、感情を伴う場面でもよく使われます。
5. aldrig mer:「もう二度と〜ない」
aldrig mer は「もう二度と〜ない」という非常に強い否定です。過去の経験を踏まえ、将来に対する決意を表現する際によく登場します。
- Jag gör det aldrig mer!
(私はもう二度とそれをしません!)
mer(もっと) が加わることで「二度と繰り返さない」という意味合いが強調されます。
6. ingen / inget / inga:「何も/誰も〜ない」
否定の幅を広げる重要な語が、不定代名詞 ingen / inget / inga です。対象の性・数によって形が変化し、「誰も〜ない」「何も〜ない」と表せます。
英語の no one / nothing に近い表現です。
- Jag har inget att säga.
(私は言うことが何もありません) - Det finns inga problem.
(問題は一つもありません) - Ingen vet svaret.
(誰も答えを知りません)
これらは主語や目的語として文に現れることが多く、inte を使わずに否定を表せるのが特徴です。
ingen / inget / inga については、以下の記事でも解説しています。

7. 語順と否定表現の関係
スウェーデン語の否定表現は、語順によってニュアンスが微妙に変化します。
- Jag tycker inte om kaffe.
(私はコーヒーが好きではありません) - Inte jag, men hon gillar kaffe.
(私ではなく、彼女がコーヒーを好きです)
前者は単純な否定ですが、後者は「他の人ではなく私」という対比的な意味合いを帯びます。
inte を文頭に持ってくることで「強調の否定」や「対比」を表せるのです。
8. まとめ
- inte:基本の否定
- inte längre:もう〜ない(時間的変化を表す)
- inte än:まだ〜ない(進行中・未来的状況)
- aldrig:決して〜ない、一度も〜ない
- aldrig mer:もう二度と〜ない(強い決意)
- ingen / inget / inga:誰も〜ない、何も〜ない