忙しく時間が流れる日々の中で、心をゆっくりと回復させたいというスウェーデン人にとって、ダーラナ地方は憩いの場として知られています。
この地方はスウェーデン中部に位置し、穏やかな空気に包まれた自然豊かな場所で、昔ながらのスウェーデンを象徴する場所とされています。
今回の記事では、ダーラナ地方の特徴や工芸品について紹介していきます。
スウェーデンらしい景観が広がるダーラナ地方
ダーラナ地方は、スウェーデン中部スヴェアランド地域に属する1つの地方であり、県庁所在地のファールン市をはじめ全15都市で構成されます。
この地方は、スウェーデンの首都ストックホルムから電車で2〜3時間の場所にあり、長閑で静かなエリアとして知られています。
スウェーデンの美しい自然景観は、透き通った湖や緑豊かな樹林が印象的です。ダーラナ地方は、そのようなスウェーデンの原初的な風景を色濃く残すエリアとして有名で、赤色に塗られた家屋が点在しています。
この色はファールンレッド(Falun Red)と呼ばれるスウェーデン伝統の塗装で、木造家屋が統一された色合いで揃い、赤褐色の街並みと青空とのコントラストが美しいと評判です。
ダーラナ地方には多くの湖が存在し、中央部にあるシリヤン湖をはじめ、美しい景観を形成しています。
シリヤン湖のほとりにあるレットヴィークという町は、毎年夏になると大規模な夏至祭が催される場所としても知られています。
こうした古き良きスウェーデンの風景がダーラナ地方全体に広がっており、忙しない毎日を過ごすスウェーデン人にとって、この地方は心の拠り所のような存在となっています。
世界遺産に登録されているファールン
ダーラナ地方は、17世紀には世界的に有数の銅や鉄の産出地として栄えます。
特に、現在の県庁所在地であるファールン市は、スウェーデンの鉱物産業の基盤であり、中心的な銅の産出地でした。
13世紀から1992年の閉山まで、長期にわたって鉱物資源の採掘が行われたファールンは、2001年には「ファールンの大銅山地域」として、スウェーデンの世界遺産にも登録されました。
また、銅の精錬過程で発生する酸化鉄には防腐効果があり、銅は古くからスウェーデン木造建築の塗装として利用されてきました。
そのため、ダーラナ地方の至る所に銅由来の赤褐色が塗られた住宅が存在し、かつてダーラナ地方が有数の銅産出地だったことを示しています。
ダーラナ地方の民芸品であるダーラヘスト
ダーラナ地方は伝統工芸品の製作も盛んで、その中の一つがダーラヘストと呼ばれる木彫りの馬です。
ダーラヘストは別名ダーラナホースとも言われる、ダーラナ地方発祥の民芸品で、元々はきこりが夜の空き時間を利用して、子供のために作ったおもちゃが原型とされます。
現代ではダーラナ地方を代表する特産品となり、各地にダーラヘストの工房があります。ダーラヘストは木材の彫刻から塗装まで、全ての工程が職人の手作業で進められるのが特徴です。
手作りならではの形の不揃いさもご愛嬌です。カラーも定番の赤色をはじめ、黒色や白色、青色まで多彩なバージョンがあります。
ダーラヘストには花柄の模様が描かれることが多いのですが、これは「クリビッツ」と呼ばれる、ダーラナ地方伝統の模様となります。
ダーラヘストは主にお土産として販売され、手のひらサイズから子供が乗れるほどの特大サイズまで、その種類も多種多様です。
最も大きいサイズだと、ダーラナ地方のアヴェスタという場所に、13mもの高さがあるコンクリート製のダーラヘストがオブジェとして置かれています。
ダーラヘストがお土産として人気な理由として、デザインの良さももちろんですが、ダーラヘストに伝わる伝承も関係しています。
ダーラヘストは北欧では「幸せを呼ぶ馬」として知られ、ダーラヘストを家の中に置くと、その家の住民に幸せが訪れるという言い伝えがあります。
そのためダーラヘストは友人や家族、お世話になった人へのプレゼントとして大変喜ばれます。自宅のインテリア雑貨として置いている人も多いのだそうです。
幸せを運ぶ木彫りの馬、ダーラヘストに関しては以下の記事の方でより詳しく解説しているので、もしよければこちらもご覧ください。
まとめ
近代化が進むスウェーデンにおいて、ゆったりとした時間が流れるダーラナ地方は、仕事で疲れた時にふらっと立ち寄りたい居心地の良さがあるそうです。
人の温もりを感じられる手作りのダーラヘストなど、ダーラナ地方ならではの工芸品も人気となっています。