フィンランドには毎年5月1日になると市民が街に繰り出してパーティを開く、ヴァップという祝日があります。
世界的には当日はメーデーという、労働条件改善に向けた労働者階級のための日に定められていますが、フィンランド版のメーデーであるヴァップはまた違う特徴があるのです。
そこで今回はフィンランドで行われる、ヴァップの日について解説していきます。
毎年5月1日はヴァップの日
5月1日は世界的にはメーデーの日とされ、多くの国で労働者の権利向上を求めてデモや集会が行われるのが通例です。
一方、フィンランドでは5月1日は「ヴァップ(Vappu)」という祝日になっています。
ヴァップ当日は他国のメーデーの日同様、労働者の待遇改善を目的とした活動もフィンランド市内で行われます。
ただ、フィンランドのヴァップは労働者の日としてはもちろん、皆で食事やお酒を持ち寄って春の来訪を祝うイベントの側面も強いのが特徴です。
寒さ厳しい北欧諸国では、春の季節の到来は長らく待ち侘びた大切な日です。
そのため5月1日にはフィンランド市民は春の暖かな日差しを浴びながら、公園や湖沿いでお酒と食事と共にパーティを楽しむのです。
早い人だと前日の4月30日の夕方にはパーティを始め、そのまま徹夜で当日を迎える人もいるそうですよ。
ちなみにヴァップ当日は若者からお年寄りまで、高校卒業時に受け取る白い帽子をかぶって祭りに参加するのが伝統となっています。
また、ヴァップが始まった背景には諸説あるのですが、元々はカトリック教の祝日である「聖ワルプルギス」が次第にフィンランドの上流階級の高校卒業を祝う祭典に変わり、その後現在の形になったと言われています。
そもそもメーデーとは?

メーデーとは毎年5月1日に労働者が集まり、給与や待遇といった労働環境改善を要求する1日のことです。
当日はデモやストライキ、集会など労働者のための様々な活動が行われます。
このメーデーの日は国際連合が正式に定めた記念日で、5月1日は労働者の祭典として、世界の約80ヵ国以上の国で祝日となっています。
メーデーの日を制定するかは国によって差異があり、個人の権利意識が強い欧米諸国は積極的な一方、日本では5月1日はメーデーではなく普通の平日です。また、北欧ではデンマークも同様にメーデーはありません。
メーデーの起源は、元を辿ると古代ローマまで遡ります。ローマ神話に登場し、春の到来を司る豊穣の女神マイアに対し、毎年5月1日に五穀豊穣を祈り供物を捧げる祭事「五月祭」が由来となっています。

そして今日の労働者のための祝典となった契機が、1886年5月1日にアメリカのシカゴで行われた大規模なストライキです。
当時の1日12時間の長時間労働から、8時間労働に変更するよう労働者がデモを起こした出来事をきっかけに、現在のメーデーの日が定められるようになったのです。
当日は炭酸飲料のシマを飲むのが定番

フィンランドではシマという、ヴァップ当日に決まって飲む伝統的な炭酸飲料があります。
シマは水とレモン、砂糖と共にドライイーストで発酵させて作ります。発酵の過程で発生する炭酸ガスによる、さっぱりとした飲み心地が魅力です。
シマの歴史は16世紀まで遡り、元々はドイツやラトビアから輸入された高級なお酒でした。
その後、安価な砂糖が市場に出回ることで価格が下落し、労働者をはじめ一般市民の間にも広まります。
そのような背景から、シマは労働者階級の飲み物として、ヴァップの日に飲まれるようになりました。
シマはヴァップには欠かせない飲み物ですが、アルコール発酵させて作るため、シマは若干のアルコール分が含まれます。
シマの元となった蜂蜜酒よりはアルコール度数は低いものの、念の為子供に与えるのは避けて、代わりにノンアルのシマをあげる親が多いようです。

ヴァップで食べられるお菓子ムンッキ

ヴァップではシマと一緒に食べるお菓子として有名なのが、ムンッキと呼ばれる揚げ菓子です。
見た目はドーナツなのですが、ムンッキは事前にドライイーストで生地を発酵させてから油で揚げて作ります。
そのため通常のドーナツと比べて生地がふわふわしているのが特徴で、実際はドーナツと揚げパンの中間のようなお菓子とされています。
また、ムンッキは風味をつけるためスパイスのカルダモンを入れる点も、日本のドーナツとは異なります。

まとめ
フィンランドで春の到来を祝い各地でパーティを楽しむ、フィンランド版メーデーであるヴァップについて紹介してきました。
ヴァップの日にはムンッキやシマなどの絶品グルメも登場し、1日を通してフィンランドの街は大きな活気に包まれます。
春の季節を大々的に祝う、まさに冬が厳しい北欧ならではの風習ですね。