キャロットケーキは野菜であるニンジンを使用した、綺麗なオレンジ色と優しい甘さが魅力のスイーツです。
ニンジンは砂糖の代替品として使用されてきた歴史もあり、実はスイーツとの相性も良い食材なのです。
イギリス発祥のキャロットケーキは北欧でも大好評で、スウェーデンのFikaにも定番のお菓子となっています。
今回は北欧でコーヒーのお供として親しまれる、キャロットケーキの魅力について解説していきます。
ヘルシースイーツとして話題のキャロットケーキ

皆さんは、キャロットケーキは食べたことはありますか?
キャロットケーキは、細かくすり下ろしたニンジンを加えた生地をオーブンで焼き上げて作る、色鮮やかなオレンジ色の見た目が特徴のケーキです。
レシピでは主軸となるニンジンの他に、甘味や食感をプラスするためにクルミなどのナッツ類やレーズンも好みで加えられることもあります。
また、キャロットケーキの生地の表面にはクリームチーズやサワークリーム、バターと言った、フロスティングあるいはアイシングと呼ばれるクリームペーストも塗られます。

ニンジンが入った生地の甘味、クリームチーズの酸味のコントラストもキャロットケーキの魅力の1つとされています。
キャロットケーキに少量のスパイスも加えることで、風味にアクセントを加えることができます。
スパイスとしては例えば、スパイスの女王とも呼ばれ芳醇な香りが特徴のカルダモン。日本でもお菓子作りで活躍する甘い香りのシナモンが代表的です。

キャロットケーキは日本ではまだあまり馴染みないケーキかもしれませんが、北欧やヨーロッパではカフェやケーキ店で必ずと言っていいほど見かけるケーキです。
元々はイギリス発祥のスイーツで、20世紀には野菜を使用したヘルシースイーツとしてヨーロッパやアメリカなど欧米を中心に人気となりました。
スウェーデンではFikaのお菓子として人気

キャロットケーキは、スウェーデンをはじめ北欧諸国でもショートケーキやチーズケーキと並ぶ人気のケーキとして食べられています。
中でもスウェーデンでは、Fika(フィーカ)の際のお菓子としてキャロットケーキは定番となっています。

Fikaとは、家族や友人と一緒に甘いお菓子を摘みながらコーヒーと会話を楽しむ、スウェーデン伝統のコーヒーブレイクの習慣です。
スウェーデンは世界でもトップクラスのコーヒー消費量ということもあり、コーヒーと相性が良いスイーツが好まれています。

そしてFika において、キャロットケーキはシナモンロールと並ぶ人気を誇るケーキなのです。
スウェーデンではキャロットケーキは、「モーローツカッカ(Morotskaka)」の名前で呼ばれています。
スウェーデン語でニンジンは「モーロート(morot)」、ケーキは「カッカ(kaka)」となっています。

ニンジンと言えば、日本では子供たちの中で特に好き嫌いが分かれやすい野菜だと思います。
しかしスウェーデンのニンジンは、日本産と比べてニンジン独特のクセや匂いが控えめと言われています。
そのため、スウェーデンの子供たちはニンジンやキャロットケーキが大好物なのだそうです。
ニンジンは中世ヨーロッパでは砂糖の代用品だった

キャロットケーキの発祥はイギリスと言われています。
18世紀〜19世紀にイギリスで出版された料理本では、キャロットケーキの元祖とされる「キャロットプティング」というお菓子がすでに登場していました。
さらに時代を遡ると、中世ヨーロッパの時代から、ニンジンはスイーツの食材や甘味料として使用されていました。
中世ヨーロッパでは砂糖は現代と違い、滅多に市場に出回らない高級品として扱われていました。
そのため砂糖を嗜好品として食べることができるのは、貴族など一部の富裕層に限られていたのです。

その中でニンジンは、当時希少だった砂糖の代用品となる甘味料として、庶民の間で使用されていた歴史があります。
というのもニンジンは、実は野菜の中でも甜菜(てんさい)に次ぐ2番目に糖分量が多い食材です。
砂糖のような強烈な甘さはありませんが、自然で優しい甘さを持つニンジンは当時では十分に甘味料として代用できる食材だったのです。
戦時中のイギリスで再流行

元々中世のレシピであったキャロットケーキですが、イギリス国内では第二次世界大戦中にキャロットケーキが再度流行するようになります。
当時の戦時下のイギリスでは食料は配給制で、特に砂糖の流通量は少なく入手困難な状況でした。
そしてイギリス政府は入手困難な砂糖の代替品として、キャロットケーキなどニンジンを使用したデザートのレシピを普及させたのです。
おそらく戦時中の食料不足改善や、国民の不満解消を目的とした政策だったのでしょう。
この出来事がきっかけでイギリス国内ではキャロットケーキがブームとなり、食卓からカフェまで、至る所で食べられるようになったのです。
1960年代以降に世界中に広まった

キャロットケーキは当初、今のようにお店で食べるというよりも、自宅のオーブンで焼いて食べるような家庭料理に近いお菓子だったと言います。
しかし1960年代頃からアメリカでも人気を博すようになると、次第にカフェやケーキ店でも販売がされるようになりました。
また、現在のようにニンジンのスポンジ生地にクリームをペーストしたお馴染みの形も、この時期に確立したとされています。
1960年代〜1970年代にかけてアメリカやヨーロッパでキャロットケーキが広まる中、スウェーデンでも1970年代にキャロットケーキ人気が到来したとされています。
まとめ

食卓の定番中の定番とも言える緑黄色野菜のニンジン。サラダやシチューには欠かせない食材ですが、実はケーキに使っても美味しく食べることができるのです。
スウェーデンをはじめ、北欧やヨーロッパ、アメリカの甘いもの好きを魅了したキャロットケーキを、自宅でも是非焼いてみましょう。
