【初級文法⑥】スウェーデン語の後置定冠詞

スウェーデン語には、英語の「the」にあたる定冠詞の使い方として、特徴的なルールがあります。
それは名詞の後ろに定冠詞をくっつける、後置定冠詞という仕組みです。
スウェーデン語では、名詞の後ろに特定の語尾を足すことで「その〜」という意味を表します。
このレッスンでは後置定冠詞の形、使い方、注意点をしっかり学んでいきましょう。
1. 後置定冠詞とは何か?
スウェーデン語の大きな特徴のひとつに、「名詞の後ろに冠詞をつける」というルールがあります。
たとえば、「その本」「その車」などを表すとき、英語では the book, the car のように名詞の前に冠詞 the を置くのが普通ですが、スウェーデン語では以下のようになります。
- en bok(ある本)→ boken(その本)
- en bil(ある車)→ bilen(その車)
このように、名詞の後ろに「-en」「-et」などの語尾を足すことで、スウェーデン語では「the 〜」の意味を表します。
この後ろにつける冠詞を、後置定冠詞と呼びます。
後置定冠詞は、ある名詞が「既に知られているもの」「特定のもの」を指すときに使われる文法形式です。
- Jag köper en bok.(私は本を一冊買います)
→「どんな本でもよい」=不定 - Jag köper boken.(私はその本を買います)
→「相手も知っている本」=定冠詞つき
このように、「話し手と聞き手の間で共有されている名詞」に後置定冠詞がつきます。
名詞のタイプ(共性か中性か)や単数・複数かによって、語尾の形は変わりますが、基本的な仕組みは「名詞+語尾(-en / -et / -na(複数) など)」です。
2. 名詞の性と後置定冠詞の形
スウェーデン語の名詞は、基本的に2つの性に分類されます。
- 共性名詞(en名詞):en bok(本)、en hund(犬)など
- 中性名詞(ett名詞):ett hus(家)、ett brev(手紙)など
そして、語尾の「-en」「-et」は、 名詞の「性」によって使い分けられます。
- 名詞 + -en(共性名詞の場合):en bok → bok+en → boken
- 名詞 + -et(中性名詞の場合):ett hus → hus+et → huset
ポイントは、不定冠詞が消えて語尾になるということ。
つまり、「en bok」→「boken」では、不定冠詞「en」が消えて、代わりに語尾に「-en」がつきます。
3. 名詞が母音で終わるときの定冠詞のつけ方
スウェーデン語では名詞が子音で終わる場合、 -en(共性)/-et(中性) を語尾につけます
ただし、名詞が母音で終わる場合には、語尾の母音のあとに -n(共性)/-t(中性)だけをつけるケースが多いです。
名詞(不定形) | 意味 | 定冠詞形 | 備考 |
---|---|---|---|
en flicka | 少女 | flickan | -a で終わるので -n だけをつける |
en pojke | 少年 | pojken | -e で終わる場合も -n をそのまま追加 |
ett äpple | りんご | äpplet | 語尾が -e のため、-t を追加 |
ett öre | オーレ(通貨) | öret | 同様に -t を追加 |
4. 複数形の後置定冠詞
複数形になると、まず名詞を複数形にし、その後に定冠詞語尾(-na / -en など) をつけます。
以下に代表的なパターンを示します。
不定複数形 | 定冠詞語尾 | 定冠詞複数形の例 |
---|---|---|
-or(en型) | -na | flickor → flickorna |
-ar(en型) | -na | bilar → bilarna |
-er(en型) | -na | böcker → böckerna |
-n(ett型) | -a | äpplen → äpplena |
無変化(ett型) | -en | hus → husen / brev → breven |
このように、名詞の複数形と定冠詞語尾の組み合わせで、「その〜たち」という意味になります。
まとめ
- 定冠詞の語尾(-en / -et / -na など)は 名詞の性、語尾、数(単数・複数)によって変化します。
- en型(共性名詞)では原則 -en、ただし語尾が -a の場合は -an。
- ett型(中性名詞)は基本 -et。ただし語尾が母音のときは綴りに注意。
- 複数形では名詞の複数形に応じて -na / -en / -a などが使われ、パターンが多いため、例文と一緒に覚えるのがおすすめです。