スウェーデンにはプリンセストルタと呼ばれる洋菓子があります。
プリンセストルタは表面を緑色の生地で覆われた、個性的で可愛らしい見た目をしたケーキです。
スウェーデンでは誕生日にテーブルに並ぶほど人気ぶり。さらにプリンセストルタという名前の裏には、スウェーデンの王族に由来する逸話もあります。
そこで今回は、スウェーデン発祥のケーキであるプリンセストルタについて解説していきます。
プリンセストルタとは?

プリンセストルタ(prinsesstårta)は、鮮やかな緑色と滑らかなドーム状の見た目が特徴のケーキです。
プリンセストルタの発祥は1920年代のスウェーデンと言われています。
100年近い歴史を持つ洋菓子なんですよ
プリンセストルタの「プリンセス(prinsess)」はスウェーデン語で「王女」、「トルタ(tårta)」は「ケーキ」を指しています。直訳すると「王女のケーキ」です。
後述しますが実は名前の命名にはスウェーデン王族が関係しています。
ちなみに英語圏ではプリンセスケーキという名称で呼ばれています。
緑色の見た目の正体はマジパン

プリンセストルタ最大の特徴なのが、ケーキの表面が緑色をしたシートでコーティングされていることです。黄緑色にも近いカラフルな色合いは、非常にインパクトがありますよね。
この緑色のシートの正体は、着色料で色付けして薄く伸ばしたマジパンです。
マジパンとはアーモンド粉(アーモンドプードル)や砂糖を練り合わせて作るお菓子のことです。
マジパンは半固形で粘土のように自由に形を変えられるため、お菓子のデコレーションにもよく使われます。
プリンセストルタを作る際には、マジパンを捏ねて、麺棒で広く薄く伸ばします。そしてシート状になったら、事前に作っておいたケーキ生地を包み込むように上から被せます。
プリンセストルタの頂上にはバラ型の菓子を乗せることも多く、こちらのバラもピンク色に着色されたマジパンが原料となります。
また、プリンセストルタに使うマジパン生地は、緑色が本来のカラーです。その一方で、ピンク色や白色など他のカラーのバリエーションも豊富に存在しています。
シーンや気分に応じて見た目をアレンジできるので、お菓子作りの際にも盛り上がること間違いないですね。
層状に重ねられた生地もポイント
緑色のマジパンでコーティングされたケーキをカットすると、その断面は幾重もの層となっています。
プリンセストルタの内部はスポンジケーキと、生クリームやカスタードクリームが折り重なった状態です。
また、アクセントとしてラスベリージャムなどのフルーツジャムを加えることもあります。ラズベリージャムの酸味が加わることで甘みが引き締まり、より食べやすくなるそうです。
プリンセストルタ誕生の経緯
「王女のケーキ」と訳されるプリンセストルタが誕生したのは、1920年代のこと。
ストックホルムで家政学の教鞭をとっていたイェニー・オーケルストレム(1867年〜1957年)という女性が1929年に出版した、「Prinsessornas kokbok(王女のレシピ本)」がきっかけです。
19世紀以前にも様々なレシピが存在していたそうですが、最終的にオーケルストロム氏の料理本に書かれている内容がプリンセストルタのレシピとして定着しました。
さらに彼女の教室には、スウェーデン王室のカール王子(オスカル・カール・ヴィルヘルム)の娘であるアルトリット王女、マルガレータ王女、マッタ王女の3名も通っていました。
そして王女たちの好物だったのが、現在のプリンセストルタです。当時、このケーキは「緑のケーキ」を意味する「グロントルタ(grön tårta)」という名称で呼ばれていました。
しかしスウェーデンの3名の王女が気に入ったことで、「王女のケーキ」を表すプリンセストルタに変更になったのです。
まとめ
スウェーデンで生まれたプリンセストルタは、表面が緑色のマジパンで覆われたユニークなケーキです。
プリンセストルタは、1929年にイェニー・オーケルストレムという女性が出版した料理本がきっかけで誕生しました。
スウェーデン語で王女のケーキを意味するプリンセストルタは、スウェーデンのカール王子の娘である3人の王女の好物だったことに由来するものです。
現代でもプリンセストルタはスウェーデンを代表するケーキとして、誕生日などのイベントに欠かせないお菓子として親しまれています。
