ダーラヘストは、スウェーデンのダーラナ地方の工芸品です。
木材を馬の形に彫って鮮やかな色を付けたダーラヘストは、北欧では幸福を運ぶ馬の置物として、インテリアやプレゼントとしても喜ばれるグッズとなっています。
今回は木こりが夜の暇つぶしのために彫った木馬が起源という、スウェーデンの工芸品ダーラヘストを紹介します。
ダーラナ地方発祥の工芸品
カラフルな色と模様が施された可愛らしい馬型の雑貨、「ダーラヘスト」。
ダーラヘストは、北欧スウェーデンのダーラナ地方で生まれた、スウェーデンを代表する伝統的な工芸品のひとつです。
ダーラナ地方は、深い森や湖に囲まれた自然豊かな場所です。そして、ダーラヘストはダーラナ地方のシリアン湖のそばにある工房で、職人たちの手によって生産されています。
「ダーラ(Dala)」とは、原産地である「ダーラナ地方(Dalarna)」のこと。一方、「ヘスト(häst)」はスウェーデン語で「馬」を意味しています。
また、ダーラヘストの馬はノルウェー原産で、ダーラナ地方で生産されているダーラナ馬がモデルとされています。
スウェーデンではダーラヘストと一般的に呼ばれていますが、日本では「ダーラナホース」とも呼ばれています。
鮮やかな色彩と花模様が特徴
ダーラヘストは工場の機械による大量生産ではなく、一つ一つ全て手作業で作られています。
木材の彫刻から着色まで全工程が工房で手作りされるため、形や色合いはどれも微妙に異なり、同じものは2つとして存在しません。
手作り独特の不揃いさや温かみも、ダーラヘストの魅力の一つかもしれませんね。
現在では、赤や青、ピンクなど、バリエーション豊かな色が使われ、花模様がデザインされています。
しかし、伝統的なダーラヘストは赤色が塗られており、かつては鉱山から採掘された銅を塗料として使用していたと言われています。
また、ダーラヘストに描かれている花模様は、ダーラナ地方に伝わる伝統的な模様で「クリビッツ(Kurbits)」と呼ばれています。
ギフトとして喜ばれる人気アイテム
ダーラヘストは北欧では「幸運を運ぶ馬」と言われ、家に置くと持ち主に幸福を運んでくれるとされています。そのため、出産祝いや結婚祝いなどの慶事に贈られるギフトとして人気があります。
ダーラヘストのサイズやカラーは多種多様で、5cmの手のひらサイズの小さな雑貨から、30cmを超える置物サイズまであります。日本でいうと、北海道土産の木彫りのクマと大体同じサイズですね。
また、スウェーデンではダーラヘストはシンボル的な存在で、置物以外にもバッグや食器、家具など、様々なグッズにデザインとして採用されています。
スウェーデンのアヴェスタ(Avesta)という街では、1989年に高さ13m、重さ66.7tの世界最大のダーラヘストが設置されているそうです。
ダーラナ地方の木こりが作った木馬が始まり
ダーラヘストの歴史を辿ると、元々は18世紀初期のダーラナ地方で、木こりが暇つぶしに彫った木馬が起源と言われています。
スウェーデンの冬は日照時間が短く、夕方になると外はすぐに暗くなります。 日が落ちて仕事を終えた当時の木こり達は、夜にはどうしても空き時間ができてしまうのです。
そこで暖炉の前に座りながら、余った木材で子供達のおもちゃとして、木彫りの馬を作っていました。
なぜ馬かというと、ダーラナ地方では昔から馬は木材を運ぶ役割を担うなど、森や畑の開拓や生活に欠かせない大切な動物として、人々から愛されていました。
また、当時は貧しい村では馬を持つことが難しく、馬への憧れを込めて木馬を作ったという説もあります。
作られたダーラヘストは当初、貧しい人々が木馬を各地で売り歩くなど、生活の糧を得るための商品という側面もあったと言われています。
そして時代を経るごとに、ダーラヘストは子供のためのおもちゃとして定着していきました。
最初はダーラナ地方で冬の期間のみに木こり達の手で作られていたダーラヘストですが、20世紀以降はダーラナ地方の産業として年間を通して生産されるようになりました。
ダーラヘストの大きな転機となったのが、1939年に開催されたニューヨーク万博博覧会です。
スウェーデンの国際見本市で、当時3mのダーラヘストが展示されたことで話題になり、以降は現在のように世界的に広まっていきました。
まとめ
18世紀に木こりが暇つぶしに彫った木彫りの馬が発祥で、現在はスウェーデンの伝統工芸品の一つにもなっているダーラヘストです。
木の質感や鮮やかな赤色は、スウェーデンの寒さ厳しい冬の中でも心を温かくしてくれるような、独特の暖かみを感じますね。
日本でも大切な人への贈り物としてダーラヘストをプレゼントしたら、きっと喜んでくれることでしょう。